【考察】Summer Pockets【鏡子と瞳・時の編み人・アルカテイル】 9/2版

【サマポケ考察】

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 なかなか忙しく時間がほとんどとれなかったのだがうまく土日を使ってkey最新作『Summer Pockets』をクリアした。まさしく神ゲーで今までやってきたゲームの中で一番良かったまである。涙なしには語れない最高の作品だった。keyありがとう。布教頑張るからアニメ化本当にお願いします。アニメ化決まったらkey本社の方面に五体投地しますね。

さて、感想はめちゃんこあるから語りたいのだが、それは鍵っ子の友人と語るとして、このゲームで疑問に思ったこととその考察・推測をまとめておきたい。

 

(注意)この記事はこの作品の思い出をしまうポケットとして書くので、推測・妄想が入るかもですがご容赦を。意見あったらぜひ頂ければ幸いです。

ここから下ネタバレ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

更新履歴

 

8/20:時の編み人について、しろはルートでしろはが溺れてるシーンの解釈を書き直した。また、わかりやすくするため、いくつか文章を書き換えた。

8/28:微訂正中。

8/31:七海の名前の由来や絵本の内容を少し訂正。

9/2:微修正。色々考えたが、FDや続編、2次創作が捗るように曖昧にされているという感がある。ボリュームが過去作品と比べると控えめなのも、普段ノベルゲーだったり恋愛アドベンチャーをしない忙しい層まで狙った結果かもしれない。熟年の鍵っ子には物足りないように感じたかもしれないが、KEY20周年で、「これから」を考えたとき、この選択は新しい層を取り込めるという点で必ずしも誤りとは言えないように感じる。

 

サマポケの謎

サマポケで主に考察すべき登場人物は二人である。一人目が鳴瀬瞳。物語の上で謎の失踪を遂げ、あまり描写されなかった、しろはの母親である。二人目が岬鏡子。途中まではただの親戚であったが、物語を進めていくにつれ、謎が深まる、加藤家の一員である。そして気になる言葉が、「時の編み人」「アルカテイル」である。これらに着目しながらも、ほかに考察すべきと感じたこともまとめていく。

七影蝶について

蒼ルートやグランドルートでの七影蝶をみて、その特徴をまとめるとこうなる。

  • 人の後悔などの記憶を抱える蝶。触ったらその記憶を追体験できる。追体験はやがて記憶のオーバーフローを引き起こす。
  • 『記憶の還る場所』のうちの一つ、鳥白島に昔から集まってくる
  • 多くの七影蝶は、空門家が儀式で使う、灯籠に近づいてくる
  • 基本夜行性
  • 見える人と見えない人がいるが、どちらにも基本危険(藍は見えなかったが、七影蝶に触れたために記憶のオーバーフローを起こし植物状態になったと考えられる。蒼は前者だったが同様)
  • 知り合い、友人などの七影蝶なら安全
  • 現世と少しずれた場所、ずれた時間にある、常世との境目である橘、「空門の御神木」と深くかかわっている。夏の、御神木が花を咲かせている期間のみ集められるし、触ることができる(ちなみに、橘の花言葉は「追憶」である。まさしくノスタルジーを題材にしたサマポケに合う)
  • 少なくともしろはと七海には話しかけることができる(自由な会話はできない。例えばしろはの場合、夢の中で話しかけられた)
  • 少なくとも、しろはに心を過去に戻す力を与えている(おそらく瞳にも)(羽未にも?)
  • 人体を構成することも可能(うみ、七海)(鴎は?)(紬も?)
  • 時間も越えられる(うみ、七海)
  • 他人を救おうとする七影蝶も存在(蒼ルートの藍の七影蝶や、しろはルートの堀田ちゃんの母の七影蝶など)
  • 七影蝶を見える人が、ある人を拒絶している場合、その人の七影蝶が見えないこともある(蒼は藍を拒絶していたため見えなかった)

 

鳴瀬家の能力

鳴瀬家、というより鳴瀬一家の女性には「辛い思いをして、過去に縛られ過去を切望したとき、心だけ過去に戻せる」能力をもつ。これは未来を見るというわけではない。「未来が見える」ならその未来を変化させることができるが、心が未来から過去に向かうというのは、まず「未来の事象」が確定してから「過去の自分がそれを知る」のである。 順番は以下のようになる。

(1)未来での悲劇を体験→未来の自分が「逃げ出す」→未来から、心だけが現在に戻ってくる→現在の自分が「未来を視た」と感じる

また、この能力で過去に戻ることができる。この場合は以下のようになる。

(2)現在での悲劇を体験→現在の自分が「逃げ出す」→現在から、心だけが過去に戻ってくる→過去の自分が意識を取り戻す

 

まず、(1)について着目する。

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この能力は未来の事象が先に決まる、つまり、未来の不運を「確定」して、避けられないものにしてしまうものである(以後、心を過去に戻すことを、「未来を確定する」と表記する)。悪い未来が確定して、避けられないものになり、ほかの可能性が消えてしまうため、鳴瀬一家はこの能力を嫌った。瞳もこの能力を嫌い、ゆえに口癖のように「過去を懐かしむ暇もないくらい楽しむ」と言っていた(ちなみに、瞳が、この鳴瀬家の能力について、『夏を楽しめばいいのよ』と小鳩に伝えている。このことから、この能力は夏限定で使えるものとして把握してよいだろう)。

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しかし、(瞳が知ってか知らずか、というか、瞳が「夫が死ぬ未来を確定させた」のか)しろはの父親が亡くなってしまった。その悲しみでしろはは夏を楽しめなくなり、鳴瀬家の能力を知る。夢の中でしろはは、七影蝶に『あいにいける……力があるよ……』と教わったのだ。それを母親に伝えたら、母親は失踪してしまった。

(未来がわかるというのは必ずしも悲劇ではないようだ。しろはルートでは、自分の幸運を「予知」している。未来のしろはが、恋人関係になるときに恥ずかしさで「逃げ出した」のかな?)

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次に(2)過去に戻る能力について。

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(1)と同様に考えると、この能力は現在の悲劇が確定してから「逃げ出し」、過去に戻る。つまり、現在の不運が「確定」して、避けられないものにしてしまうものである。上のように、通常の鳴瀬家の女性は、過去に戻ってもやり直せるわけではない。瞳としろはと、西暦2000年に来る前の羽未は、過去にもどる力はあるにもかかわらず、過去改変はできず、悲劇を何度も受け入れざるを得ないという、因果な話である。

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ただし、うみが西暦2000年に来たあと、この能力に変化が起きたのか、必ずしも『おなじみらいをたどる』ことはない。

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うみが西暦2000年に来たあと、羽依里にはいくつかののルートがある。蒼ルート、鴎ルート、紬ルート、しろはルート(通常)、ALKA TALEなどである。このように、うみのいる、西暦2000年にはどうして「異なる可能性」があるのか。考察の進行上、ここでは書けないのであとで再考する。

 

なぜ羽未はPocket編で七海と名乗ることになったのか?

「七つの海」は、鴎ルートで言われたような「全世界の海」の意味ではなかろう。そのような描写はなかったため。

 

羽未は「海」を超えてきている。しかし、その「海」は実際の海ではなく、時間を越えるときに通る「記憶の海」である。ALKA TALEの終わりのシーンでは、『膨大な記憶の海を越えていく』という表現がある。「七つの海」というのは、「羽未の時間をも越えた永い旅路」を示す言葉であろう。七海という名前はここから派生する。

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(↑羽未が実際に旅してきたと思われる「海」)

ゲーム起動時のモノローグでは以下のような文言が流れる。

ずっと昔 小さな頃 永遠みたいな夏を、駆け回っていた 

家族と 友達と どんなに遊んでもやることは尽きなくて 

太陽はそんな毎日を、まぶしく照らし続けてくれた 

いつの間にか、そんな思い出は記憶の彼方へ 

ただ、あの日、まぶたに感じたまぶしさだけは、覚えている 

あのまぶしさを探して、僕は飛んでいた 

小さな羽で、大きな海をわたろうとしていた 

かなたに、小さな影が見えていた 

海のうえに、ぼんやりと浮かぶ影 

あぁ 目指した場所はもう少し もう少しで、たどりつける あの夏に 

このモノローグで、小さな羽を持つ、「僕」は羽未であろう。彼女が、「影法師さん」に出会うまでの旅路で実際に「(記憶の)海」を通っている。

また、ALKA TALEのエンディングテーマの『羽のゆりかご』に以下の歌詞がある。

『七つ海越えて 旅の終わり 見つけたら』

何度も、「海」を越えて、ついに『旅の終わり』Pocket編に移ったのである。

七海につきまとっていた七影蝶は何?

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(↑「バタフライ」エフェクト)

七海がよく見た七影蝶とはいくつかの会話がある。

『いいの?』

七海『決めたんです』

『あなたは分かっていない』

『消えるということを』

『なにもかもから、忘れられるということを』

『それがどういうことか』

『どんなに哀しいことか』

『あなたは分かっていない』

この蝶は七海を構成している七影蝶のうちの一人であるとされている。しろはの七影蝶なら七海のこの行動を許さず、より真剣に止めるだろうし、セリフ回し的に羽依里のでもなかろう。確証はないが、白羽の伝承で蝶になることで、他の全てを失った瞳かと思われる。「失った」ことのある瞳だからこそこの懸念は抱けたのではないか。

ノローグの「影法師さん」は誰?

しろはなのか、瞳なのか長らく迷っていたが、おそらく瞳。

4ルートをクリアした後のモノローグでは、『なんとなく、影の形がはっきり見える 僕は少し考える この人を、知っている気がする 誰だったかな どうしても思い出せない』とある。また、Pocket編の最初のモノローグでは、『あの人が誰だったのか 僕は思い出そうとしている だけど、思い出せそうで思い出せない』ともある。

一方、前項で説明した、Pocket編で七海が過去改変しようとするのに対し、瞳が忠告しているシーンでは瞳の七影蝶についてこう述べている。

f:id:awatake9:20180819013743p:plain『どこかで聞いたような声。ずっと昔なのか、最近なのか。記憶が戻ったはずなのに、思い出せない。なのに、不思議と怖さは無かった。』

もしこの蝶がしろはなら記憶の戻った七海は思い出せるはずである。ここで思い出せないということ、そしてモノローグと瞳の七影蝶についての七海の所感の類似性から、影法師さんは瞳だと判断した。

しろはルートでうみはなにをしていた?

しろはルートでは、蝶番の儀の前に、羽依里が蝶に誘われ、御神木のもとへ行き、そこでうみと出会う。ここでうみは何をしていたのか。

このシーンでは、うみがまだ幼児化しきっていないとき(「鷹原さん」「羽依里さん」呼びの時)は少し迷ってただけと言い、怒っているそぶりを見せた。しかしうみの幼児化が進んだころ(「おにーちゃん」呼び)は『ちょっと、おさんぽ……』と言い、寂しそうなそぶりをみせた(寂しそうだった理由は間違いなく、しろはに会い、母親としたいことができなかったからだろう)。

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着目すべきなのは、これを最後に、うみは「帰る」ことと、もう一つ、羽依里が溺れているとき、うみの声が聞こえていることである。

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声『……』

『誰かの声が聞こえた。』

これはうみの声で「こっち……」と言っている。このシーンの描写はALKA TALEを思い起こさせることからも、羽依里は水中で羽未の蝶へ手を伸ばしていると考えられる。うみが羽依里たちを助けようと働いているのは確かだろう。羽未と蝶の群れの働きにより、しろはによって固定化された、羽依里、しろは、堀田の三人が溺れる未来が、羽依里としろはの二人が溺れる未来に、わずかに変化したのかもしれない。

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やはり、うみはしろはルートの最後で、羽依里を救うため、そしてそのあと「帰る」ため、あの御神木の領域にいたと考えられる。

この考察を裏付けるものとして、ALKA TALEでは羽未が溺れたシーンで七影蝶はでてこない。ALKA TALEでは羽未は溺れている当事者で羽依里を助けることはできないため。

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普段のうみは、そして「帰った」後のうみは何をしていた?(推測込)

「帰った」後のうみについては鴎ルートとPocket編を比べることでわかる。以下二枚が鴎ルート。うみが「帰った」後、羽依里はしろはに会って、ひげ猫団の旗を描くように依頼している。

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一方、Pocket編では、このシーンを七海が大切な思い出として幼いしろはに教えている。

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このタイミングにはうみは「帰った」後であるが、「帰った」後のこともうみは知っているということは、うみはどこかで(七影蝶になって?)羽依里を観測していたということになる。そのあと、本当に過去に戻ったのだろう。

また、普段のうみについても、Pocket編の思い出を渡しているシーンから推察できる。

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上のシーンはしろはルートであり、このシーンにうみはいないが、Pocket編では大切な思い出としてしろはに教えられている。やはり、普段からうみは羽依里を観測していると考えるべきだろう。まとめると以下のようになる。

通常ルートのうみの動き

  • 朝:朝食を作る。ラジオ体操に行く。
  • 昼:羽依里を観測する。羽依里はうみに気づかないがうみは羽依里を見ていることから、うみが蝶になって羽依里を見ている可能性もある。たまに羽依里が昼間に家に戻ってくるときは、自宅に羽依里より先に戻る。蒼ルートなどで、普通に虫取りなど遊びに行っていることもあるようだ。
  • 夜:夕食を作る。風呂に入る。少し羽依里と話す。
  • 最後:鏡子さんに「帰る」と言う。しばらく羽依里を観測した後、空門の御神木のある神域から、影法師さんのいる神域へ。影法師さんとのモノローグのあと、過去に戻る。

(ひょっとしたら、うみが各ルートで羽依里を観測していたから、しろはに思い出を伝えられたのではなく、七海を構成する羽依里の七影蝶がしろはに、思い出を伝えたのかもしれないが……)

ALKA TALEでの絵本のラストは?

不明。わざと不明にしてある。

個人的には、『蝶は静かに眠りにつきました。みんなは悲しみ、涙が雨になりました。』「その雨の後、大きな虹がかかりました。その色は昔の蝶の色と同じでした。その虹が眠った蝶に色を戻し、眠りから覚ましてくれました。」とか想像した。

一応、内部データによると、『蝶は静かに眠りにつきました。みんなは悲しみ、涙が雨になりました。』『 雨が止むと蝶は大きな虹になっていました。世界を包むようなとてもきれいな架け橋です。みんなが見上げてありがとうと言いました。』であるらしい(未確認情報)。

しかし、『みんなが見上げてありがとうと言いました』ということは、みんなが蝶(=羽未)のことを覚えているという前提に成り立つ。しかし、ALKA TALEでもPocket編でも羽未は記憶から消えていく存在である。この絵本はこの時点でALKA TALE編、そしてPocket編の羽未の末路をにおわせるために最後まで読まれていない。

羽依里の能力について

まず羽依里について。羽依里は、以下の3つの能力がある。

  1. 他の世界の記憶をわずかに持つ、「へじゃぷ」の能力

    この能力は多くの人が推測しているであろう。説明不要かもしれないが、一応、Pocket編の例を示しておく。

    Pocket編ではしろはとすれちがう時に大きな喪失感を感じていた。また、蔵掃除の後、『やっとお力になれてよかったです』と話している。

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    『やっと』という言葉は他の世界で蔵掃除をほとんどしなかったことを、ほんの少し覚えていたからこそ出た言葉である。

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    蔵掃除ができたのも、他の世界での記憶がわずかに存在したためであろう。蔵の中にある「ツムギが祖母にあげたぬいぐるみ」「藍を救う手掛かりの古文書」などは、この世界の羽依里には「なぜかわからないけど大切なもの」として感じられただろうし、こういった記憶は蔵掃除に少なからず寄与したと思われる。

  2. うみが渡った「海」を感じる能力

    7/29の寝る前にその様子がある。

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    このシーンでは海の波の効果音がかかっている。Pocket編で羽未に出会うシーンでも同様の効果音がかかっているし、『なつかしい』といった描写からも、この海はただの海ではなく、羽未の通ってきた「海」と考える方が適切だろう。

  3. 羽未の憂鬱な経験を夢で見る能力

    羽依里には、また、大人になった羽依里が羽未と二人暮らしをしている頃の夢を見ることがある。以下ALKA TALEにて。

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    f:id:awatake9:20180819005028p:plainこの夢では羽依里の視点ではなく、羽未の視点である。

以上3つの能力は別々のものとしてとらえても良いだろうが、あえて一つにまとめるとすると、羽依里には、羽未の経験を追体験する能力があるとなるだろうか。羽未が鳥白島で感じたことを羽依里もわずかに感じることができて「へじゃぷ」となったり、うみが越えてきた「海」を感じられたり、羽未の経験を夢で見たりできるのだろう。蒼と藍が双子の特殊能力があったように、羽依里と羽未にも親子の特殊能力として、この能力があったのかもしれない。

鏡子さんの能力について

そして、鏡子さんについてだが、鏡子さんには羽依里以上に、他の世界での記憶を保持できる可能性が高い。なぜなら、鏡子さんは明らかに、通常ルートプロローグで羽依里と出会う時と、Pocket編ラストで羽依里と出会う時で態度が異なっている。以下三枚が通常ルートプロローグの鏡子さん。

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f:id:awatake9:20180802002344p:plain通常ルートプロローグでは、鏡子さんは羽依里をすぐには認識できておらず、また羽依里を過度に意識して緊張している節がみられる。

しかし、Pocket編では明らかに羽依里への対応が異なっている。

f:id:awatake9:20180802002907p:plainこちらでは羽依里をすぐ認識している。これは、鏡子は他の世界で羽依里と会った記憶を持っているからと結論するのが妥当であろう。

瞳と白羽について(推測込)

残されたしろはとしては、母親が父親に「あいにいった」可能性を考えていたが、これは考えにくい。ALKA TALEとPocket編はテーマが母と娘の話だからこそ、ここで瞳とその夫の話ではなく瞳としろはの話と考えよう。瞳はしろはを救うため、白羽の伝承で失踪した。

白羽の伝承について、鏡子さんは以下のように述べている。『女の人が小さな蝶になって、愛する人に会いに行くお話』『その人は愛する人に会うため、蝶になることによって、他の全てを失う』『(海に飛び込んだとき、しぶきが)羽みたいに女性をとりまいて』『女性は蝶になって飛んでいった』とのことである。この『蝶』は七影蝶との解釈でいいだろう。

白羽の伝承により七影蝶になった瞳はどうなったのか。白羽は波の比喩とされていたが、さすがにそれだけで済ますのはよくないと思われる。Pocket編には七海の持っていた白い羽があるのだから。

ALKA TALEのラストシーンで白い羽が活躍する。

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ここで、『馴染みのある声』とあるように、うみはしろはの声を聞いている。

『どうしても会いたくなったら』

『これを使うの』

『これは、私の羽』

うみは何回も時間を行き来した副作用でみんなの記憶から失われてしまった。しかしALKA TALE最後では上の写真にあるように、失ったうみの体をいろんな人間の七影蝶で補填し、あの子(しろは)を救うために、「羽」を使い、しろはの幼かったころへ戻った。物語で「羽」と言うと、やはり瞳の白羽の伝承と、七海の持っていた白い羽を思い出す。

これは推測だが、瞳は白羽の伝承で羽を手に入れた七影蝶となり、その羽をしろはに渡した(相続)と考えられる。そして、その羽をさらにしろははうみへ渡す(相続)

祖母からの羽をしろはを介して受け取り、その羽を使って、しろはを救えたから、また、影法師さんとして、支えてくれたから、Pocket編で七海は感謝を告げるのである。

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『ありがとう、おばーちゃん……』

 

(ちなみに、「白羽(シロハネ)の伝承」と関連しそうな言葉として、「白羽(シラハ)の矢が立つ」という慣用句がある。この語源は、生贄を求める神の怒りを鎮めるため、人身御供となる少女の家の屋根に白い矢羽を持つ矢を目印として立てたことを言う。もともとは「多くのものから犠牲者を選ぶ」という意味だったが今ではもっぱら「多くのものから代表者を選ぶ」といった前向きな意味に変容している。

女の人が力を得るために、海の神様へのお供えのように、海に飛び込む、「白羽の伝承」と、神の怒りを鎮めるための生贄の儀式で使われる「白羽の矢」で、共通点は多いのが気になる。そういえば、メインヒロインの「しろは」も無理に漢字読みすると「白羽(シロハ)」になる。生贄と関係した名前であろう。父母を失ったのが意図せずに鳴瀬神社の(?)神様への生贄となり、その代償で神が能力を与えたというような解釈もできるかもしれない。)

羽未が西暦2000年に行ったとき、なぜ未来に(しろはルート、鴎ルートなどの)「異なる可能性」が生まれたのか(推測)

上で述べた、羽未の過去に戻る能力の変化について。

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この差はいったいどこからきているのか?

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羽依里は、羽未が自分の生まれていない時代まで遡ったのを、『元々持っていた“心だけ過去に遡れる”という能力が、暴発したのかもしれない。 』と推測している。これが、羽未の能力の変化にも影響しているかもしれない。羽未は崖から落ちていくシーンで蝶に触れる。この蝶が羽未の過去に戻る能力に変化を及ぼし、過去に戻っても、同じ未来をたどらない能力がついたと考えられる。ただし副作用は幼児化である。

この蝶は誰なのか。羽未を救おうとしたのだから、鳴瀬家の七影蝶であろう。しろはか瞳の二択かと思われる。そして、サマポケのモノローグシーンで、「僕」と「影法師さん」の二人が出ており、前述したように「僕」が羽未であり、「影法師さん」が瞳である。このタイミングで人間の羽未と、七影蝶の瞳が出会い、モノローグでの「僕」と「影法師さん」が生まれたと推察したい。

瞳の失踪について二つの説

しろはを救う、つまりしろはが能力を封印したまま生きていくために瞳は失踪した。この失踪について、いくつかの説を考える。

最初は失踪していなかった説

鍵っ子の友人提案。これ聞いた時は天才かと思った。

「父親が亡くなったから父親の分もがんばって娘を支えなければいけない……」最初、そう考えた瞳はしろはを支えるため、一緒に生きていこうとした。しかし、どんなにあがいてもしろはと瞳が一緒にいると、自分の能力で「しろはに悲劇が訪れる未来」または「しろはに未来を確定できる能力がつく未来」を確定させてしまう。おそらくこの悲劇を避けるため、最初はしろはと一緒に暮らしていたのだが、いずれも失敗し、諦め、過去に戻って海に身を沈めて(白羽の伝承をして)「(自分のせいでしろはが悲劇に遭うという)確定した未来」を不確定に戻した。

この説が成立する場合のサマポケ時系列
  • しろは父亡くなったあと、瞳はしろはと暮らす(しろはが「能力」を得ないように見守る)
  • 数年後、2000年に羽依里がやってきてしろはと恋仲に
  • しろは妊娠後、瞳がしろはの死を確定させる
  • 羽未生まれ、しろは死ぬ
  • 羽依里は羽未と鳥白島から出る
  • 13回忌で羽未はこっそり鳥白島へ。羽未が小鳩と瞳からしろはの写真ゲット。羽依里にばれて羽未逃げ出す。(羽未がしろはの七影蝶に触れ)行方が分からなくなったことから、瞳は羽未が過去に向かったと確信
  • 瞳は過去にいったん戻る
  • 瞳の夫が亡くなった後、鏡子に会いに行く。自分がしろはの未来を奪うので、白羽の伝承で死ぬことを決意。この時、羽未についても話し、西暦2000年の羽依里が来る年に羽未と言う子が来るから迎えてくれと依頼
  • 瞳失踪。しろはは「能力」に目覚める
  • 数年後、うみのいない西暦2000年に羽依里がやってきてしろはと恋仲に
  • しろは妊娠後、しろはが自分の死を確定させる
  • 羽未生まれ、しろは死ぬ
  • 13回忌で羽未はこっそり鳥白島へ。羽未が小鳩からしろはの写真ゲット。羽依里にばれて羽未逃げ出す
  • 羽未は七影蝶に触れて西暦2000年へ。別の世界の記憶を保持できる鏡子さんは瞳から聞いていた通り、うみを加藤家に入れる
  • 2000年に羽依里がやってきてしろはと恋仲になったりならなかったり(ならなかった場合、どこかのタイミングでうみは過去にもどる)
  • ALKA TALEでうみはついに母親を知り、満足する。しかし、鳴瀬家の能力がなくならない限り、しろはは絶対に死ぬことに気づく
  • 瞳が手に入れ、しろはに渡された「白い羽」をうみがさらに受け取り、それを用いて、七影蝶の体(七海)を構成し、しろはが「能力」を得る時期まで戻る
  • しろはを救う
  • 最後の力でALKA TALEで作った家族の証、虹色の紙飛行機を蔵へ運ぶ
  • 鏡子は羽依里が来た後、蔵掃除をさせる。虹色の紙飛行機を発見し、「眩しさ」を思い出す
  • 飛行機を飛ばす
  • しろはが虹色の紙飛行機を発見
  • 海でしろはが紙飛行機を飛ばすのを羽依里は見る。大切な何かをを取り戻すため、下船してしろはのもとへ

この説は多くの謎に明快な説明を与えてくれるものだが、矛盾点がいくつかと謎が一つ残る。矛盾点の一つが、鳴瀬家の過去に戻る能力では過去改変ができないが、この説では「最初は失踪しなかった瞳が過去に戻って、今度は失踪する」ことを前提としていることである。瞳も羽未のように「過去に戻る能力が変化した」のだろうか?また、羽未と瞳が顔を合わせているはずだが、羽未も七海も瞳のことをおそらく顔さえ知らない(思い出せない)というのが引っかかる。それと、謎についてだが、鏡子の最後のセリフ『これでよかったんだよね』『瞳』がうまく説明できない。

瞳は本当に、しろはが能力に気づいてすぐ失踪した説

多分一番この説が自然なのだが……。瞳が失踪した理由に説明がつきにくい。また、鏡子さんは「鷹原羽未」を「加藤うみ」として招く必要があるが、どうやってそれを知ったか説明がつかないため、おそらく鏡子に別の特殊な能力があることを前提とする。 

 

鏡子さんの能力は?(推測込)(その2)

根拠に乏しいが、鏡子さんに、瞳さんの七影蝶を把握し、コミュニケーションを少しだけとれる能力があることも仮定したい。突然加藤家にやってきた「うみ」と名乗る女の子も、その体に宿る瞳の七影蝶に気づいて、親友瞳の運命に深くかかわる人物だと見抜き、この少女を「加藤うみ」として迎え入れた。Pocket編で、羽依里が鳥白島で蔵掃除していたときに鏡子と会わなかったのも、鏡子が瞳の七影蝶と会話していたからかもしれない。

鏡子さんはうみに瞳の七影蝶がついていることから、しろはの娘かと推定し、さらにうみが「羽未」という名前で、「羽」が共通していることから羽依里の娘かとも推察できたかもしれない。もしくは瞳の七影蝶がうみが羽依里としろはにとってとても大切な人だとほのめかしたのかもしれない。

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上はしろはルートにて。二枚目の写真で、うみは『よく羽依里君の話をしていた』が、その内容は『秘密』としている。もし、この『秘密』とが「羽依里が羽未の父親」という話なら(これ以外の話ならわざわざ『秘密』にする必要はない)、鏡子は羽未が羽依里の娘であることを知っている、もしくは推察していると考えられる。羽未は自分から「羽依里が自分の父親である」という話を鏡子にするはずはないから。 

Pocket編の鏡子さんと七海の会話について(推測込)

鏡子さんと七海の二回の会話を考える。

  • 一回目の会話:瞳の失踪数日前、白羽の伝承を聞きに来た。瞳はぱわふるで人生を楽しんでいた。曰く、「過去を懐かしむ暇もないくらい楽しむ」
  • 二回目の会話:白羽の伝承をもう一回。どうして伝承では愛する人に会う手段が「蝶」なのか、「鳥」のが速くていいじゃないのかについて、過去も未来も行ける翼は不自由(籠の中)で、会いたい人に会うためには会いたい人との距離を小さくするほかに、会いたい人と同一の時間軸を共有しないといけないと示唆。その話とは矛盾するが、過去に戻る力があったら使う。「(島のこと調べれば何かわかるかなとは言うけれど)あなたは全部知っているはずだよ」「私とこんな話をするのは、はじめてじゃないから」

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「あなたは全部知っているはずだよ」「私とこんな話をするのは、はじめてじゃないから」というのがめちゃくちゃ不自然である。一回目と二回目の話で共通しているのは「白羽の伝承」のみで、「はじめてだよ」と突っ込みたくなる。

これも推測に過ぎないが、鏡子さんの『その目は不思議と、僕を見ている様で違う場所を見つめているように感じた。まっすぐ、懐かしむような視線僕のに向け続ける』という描写から、七海ではなく、別の人間と会話しているつもりだったと捉えた。この別の人間とは、『懐かしむ』という描写から鏡子と仲の良い人間、つまり、瞳と推察される。瞳が失踪数日前に尋ねたお話を七海がたまたま再び尋ねたため、島の伝承に詳しく、七影蝶などにも知見のある鏡子さんはあえて、瞳に話しかけるつもりで、『あなたは全部知っているはずだよ』『私とこんな話をするのは、はじめてじゃないから』という表現をしたのかもしれない。「まっすぐ、懐かしむような視線を僕のに向け続ける」という表現も狙って作ってあるのだろうか(前述したように、七海を構成する七影蝶の中に瞳がおり、また鏡子は瞳の七影蝶を認識できると仮定している)。

羽未が最後に蔵に虹色の紙飛行機を運んだ理由

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上はしろはルートの写真。羽依里としろははともに、似たような心の傷を持っていた。だから、羽依里はしろはに声をかけた。

しかし、七海がしろはを救った後、もはやしろはは過去のトラウマを克服し、羽依里のみ傷心している。故に二人は通常なら仲良くなることはない。

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羽未は、そして瞳は、羽依里としろは、二人が出会うはずないと理解していたに違いない。だからこそ羽未は最後に、ALKA TALEの世界で作った紙飛行機を、しろはが救われたPocket編の世界に運んだ。結ばれるはずのない二人に接点を作ろうとしたのである。

鏡子の最後の意味深なセリフ(推測込)

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七海が失われ、最後の力で蔵に虹色の紙飛行機を運んだ後、瞳の七影蝶は鏡子のもとへ行ったと推測する。そして、瞳の七影蝶は、羽依里が来たら蔵の掃除を手伝わせてくれと伝える。瞳は、しろはに心の傷がないため、羽依里としろはが結ばれることはないことも、しろはと羽依里が二人一緒にいる方がしろはは幸せになれることもわかっていた。

そして、今の世界で二人を結ぶものは、ALKA TALEの世界で作った虹色の紙飛行機だけ。それを羽依里に発見させるために瞳は鏡子に、羽依里に蔵掃除させるよう依頼した。一方鏡子としてはその真意を測りかねて、夏休みを羽依里に無為に過ごさせたように感じて「これでよかったんだよね」「瞳」と心情を吐露したと考えられる。

瞳はなぜしろはを置いて失踪したか?(推測)

しろはを、「未来を確定させる」という呪縛から解き放つため。瞳は、何世代か後には鳴瀬家の能力を持つものは必ず、夏の悲劇から逃げて、過去に戻ってくるだろうと信じていた。その時に自分が七影蝶の体でその人を西暦2000年まで送ればしろはを救うきっかけになると考えた。

この説が成立する場合のサマポケ時系列
  • しろは父亡くなったあと、瞳は失踪して七影蝶化。しろはは能力に目覚める
  • 数年後、2000年に羽依里がやってきてしろはと恋仲に
  • しろは妊娠後、しろはが自分の死を確定させる
  • 羽未生まれ、しろは死ぬ
  • 13回忌で羽未はこっそり鳥白島へ。羽未が小鳩からしろはの写真ゲット。羽依里にばれて羽未逃げ出す
  • 羽未は七影蝶に触れて西暦2000年へ。鏡子さんはうみの中の瞳に気づき、うみを加藤家に入れる
  • 2000年に羽依里がやってきてしろはと恋仲になったりならなかったり(ならなかった場合、どこかのタイミングでうみは過去にもどる)
  • ALKA TALEでうみはついに母親を知り、満足する。しかし、鳴瀬家の能力がなくならない限り、しろはは絶対に死ぬことに気づく
  • 瞳が手に入れ、しろはに渡された「白い羽」をうみがさらに受け取り、それを用いて、七影蝶の体(七海)を構成し、しろはが「能力」を得る時期まで戻る
  • しろはを救う
  • 最後の力でALKA TALEで作った家族の証、虹色の紙飛行機を蔵へ運ぶ
  • 七海の体から解き放たれた瞳の七影蝶は鏡子に、羽依里が夏休みに来たら蔵を掃除させるよう依頼
  • 羽依里が来て蔵掃除。虹色の紙飛行機を発見し、「眩しさ」を思い出す
  • 飛行機を飛ばす
  • しろはが虹色の紙飛行機を発見
  • 海でしろはが紙飛行機を飛ばすのを羽依里は見る。大切な何かをを取り戻すため、下船してしろはのもとへ

時の編み人とは?(推測込)

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しろはルートの謎として、『時の編み人』という言葉がある。羽依里が嵐の海の中のしろはを救おうとするシーンで、しろはが別の人に憑依されたのか、次のようなセリフを言う。

『私は……』

『私達は時の編み人』

『異邦の少年』

『いくら求めても、無理だよ』

『たとえ、この夏に巡り逢えても』

『それだけのこと』

『私達はただ編み続ける』

この発言からいくつかのことがわかる。まず、『私達は時の編み人』から、少なくともしろはと羽依里が『時の編み人』であること。『異邦の少年』から、話者が鳥白島出身であること。『いくら求めても、無理だよ』から、話者が、ここでしろはを救っても、いずれしろはは羽未を産む時亡くなると知っており、また羽依里にはしろはを完全には救う能力がないと理解していること。『たとえ、この夏に巡り逢えても』という表現から、『この夏』のみならず「別の世界の夏」でもしろはと羽依里は巡り逢うと話者が知っていること。

この「話者」は誰なのか?未来のしろはが、自分の死と羽未について理解した後、過去に戻ってきていると捉えられなくもないが……。その場合、『異邦の少年』ではなく、『羽依里』と呼ぶ気がするし、このシーンで話したことをしろはが忘れていたのも気になる。どうも瞳の七影蝶に溺れてる時に触れ、それで瞳がしろはに憑依しているように思える。ここの話者は未来のしろはか、瞳かは悩ましい所だが、私は瞳説を推したい。

時を『編む』とはどういうことか。一般的に「編む」とは、「作る」と似た言葉として使われる。「セーターを編む」「文集を編む」など。『ただ』という表現からあふれでるむなしさも加味して考えると、『私達はただ編み続ける』とは、「私達はただ、同じような時間を作り続ける」、つまり、「夏休みの籠の中に閉じ込められて、夏休みを何度も繰り返している」ということを示しているように感じられる。

こうして考えると、『時の編み人』とは、「ループし続ける時を作るだけの人」となるかと思われる。ALKA TALEやPocket編では羽未がループから脱却しようとしているから、もはや羽依里もしろはも『時の編み人』ではないので、この言葉が出なかったのだろうか。

造語「アルカテイル」とは?(推測込)

いくつかの説がネットに上がっている。

  • 「ある夏の物語」の前半を音読み、後半を英語にして「アルカテイル」という説
  • 中国語文法で「児化」のことを日本語で「アルか」と呼ぶため、羽未が幼児化していくことを「アルカ」で示すという説
  • ラテン語で「蓋のついた箱」を示す"arca"という言葉があり、「アルカテイル」は「蓋のついた箱、つまり籠の中の物語」を示すという説
  • イタリア語で「方舟」のことを"arca"で示し、「海」を渡っていくうみを「方舟」に見立てて(?)、「アルカテイル」が「方舟(羽未)の物語」を示すという説(これは正しくないと公式が明言しているという未確認情報もあるが……)
  • 「あるかない」「あるいている」の二つの言葉と「アルカテイル」の差分が「いない」となり、羽未がしろはと一緒にいないこと、もしくは瞳がしろはと一緒にいないこと、それかうみがいなくなることを示すという説

いずれもこれと言って誤りはないように思われる(しいて言えば、"arca"と"alka"をつなげるのに若干の無理がある気がする。言語学は初心者だが、経験上ある単語の"C"が別言語で"K"となることはよくあっても、"R"が"L"になることはあまりない気がするのでarcaとalkaをつなげる発想が少し日本人的すぎる。日本のゲームなので文句はつけないが、気になる)。

私は、作中のうみが時間を越えた旅をするシーンで流れる名曲、"Twinkle of Alcor"が関与している説について推したい。

  • "Twinkle of Alcor"の"Alcor"が「アルカ」と関わる説

"Alcor"の読み方は「アルコル」または「アルコア」である。後者だと「アルカ」に近い。

この星は、日本では「死兆星」として有名である。アルコルは四等星だが、北斗七星を成す二等星の「ミザール」の近くにあるため、目が衰えてくると「ミザール」しか見えなくなり寿命が近いと考えられていた(ある漫画のせいで見えると死ぬと思われがちだが、本当は見えなくなると死期が近いと示すものである)。

アルコルの語源は二つ考えられている。以下wikipedia引用。

  • アラビア語で「かすかなもの」という意味の al Khawwar に由来するという説[1][6][10]
  • 元々 ε星に付けられていた al-jaun (黒い馬、または黒い牡牛) という名称が、西洋で g星の名称として誤って伝わり、それがラテン語化されたときに訛って Alkor となったとする説[2][6]。この説では、本来の名前は「忘れられたもの」「拒絶されたもの」を意味する سها (Suhā) だったとしている[2][6]

アルコル - Wikipedia

前者について、"al Khawwar"はちょうど「アルカワール」といった発音になる。「アルカ」との関連性が一段と強くなったように思われる。写真にも写らず消えて行ってしまううみのことをはかない、「かすかなもの」と捉えることは難しくない。

後者については「忘れられたもの」という部分が気になる。うみがALKA TALEでどんどんみんなの記憶から失われていったことを思い出さずにはいられない。 アルコルは、うみのことを指しているとしてもいいのではないか。

 また、「ミザール」についてはwikipediaに以下のように書かれている。

視力の良い観測者であれば、ζ星のすぐ脇に暗い星(4等星)があるのが分かる。この星はアルコル (Alcor) またはおおぐま座80番星と呼ばれる。この2つの星はしばしば馬と騎手に例えられ、またアルコルを見分けられるかどうかが昔から視力の検査に用いられてきた[9]

ミザール - Wikipedia

輝きの度合いから、二等星「ミザール」を騎手と、四等星「アルコル」を馬と捉える。「アルコル」を先ほど「うみ」と捉えたが、ならば「馬(うみ)」の行く方向をコントロールする、「騎手」は誰なのか。ALKA TALEで絵日記を描かせた羽依里とも捉えられる。あるいは、白い羽でPocket編への行き道を示したしろはだったり、羽未が崖から落ちるときに救い、羽未を過去に行かせた瞳とも解釈できるかもしれない。

ALKA TALEは"Alcor"の物語、つまりうみの物語とも言えそうである。